種の起源 第3章「生存闘争」

生存闘争が起きるのは、動植物が、その繁殖能力のままに繁殖を続けたら指数関数的に種族が増え、全個体が生存できないレベルに溢れかえってしまうから、とのこと。例えば象が30歳から90歳の間で3回の繁殖を行い、その度に2頭の子供を産むとすると、5世紀後には一組の親から1500万頭の象まで増えることになる。しかし実際にはそうはならない。 逆に言えば全個体が生存できる限界までは自然に増加していくのだろう。そして増加というのはただの増加ではなく、あくまで生存闘争にさらされた中で生き残れる個体が限界まで増える、という話であって、その過程で多くの個体は闘争に破れたり、あるいは寿命などでつきていくものと思う。

自然による個体数増加の抑制が働かなければ、その種族は基本的に指数関数的に増加していく。そして、その増加を抑制する要因の多くは発生初期に起きる。産卵数、産子数はその種族ごとに異なるが、それ自体は指数関数としての増殖スピードに多少の差はもたらすものの、それ以外にはならない。産卵数が多いから結果的に個体数が多くなるわけではない。産卵数の多ければ良好な環境条件下での増加速度が圧倒的に早くなるが、一方で基本的には産卵初期に抑制される可能性が高いため、多く生む必要がある、ということでもある。事実として、とある地域においてコンドルは1度に卵を2個産み、レアは20個の卵を産むが、個体数はコンドルのほうが多い。

種の個体数の上限を決めるのは、その種の利用できる食物の量になる。それは当然で、出産し、成長し、生き残っていく過程において必要なものは食料だから。個体の平均数という観点だと、上記に加えて、その個体が捕食される量が大きな影響を持つ。 人間においては、実際この世界に大きな敵は存在しない、という状況なんだろうか。 おそらく現代において、最も大きな敵は細菌・ウイルスなんだと思う。コロナにおいては2023年3月時点で688万人の死者数を世界で記録している。歴史においても、個体が大量に増加すると、往々にして伝染病が発生してきた。これは抑制の効果が働いたのかもしれないが、一方でウイルスなどの伝染病を媒介する種にとっては、人間が密集したことによってその種の増殖に良好な環境が整っただけであり、つまり人間とウイルスの生存闘争が起きているだけに過ぎないとも捉えられる。